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2004.11.08

なつのお嬢さん、はるか昔語り

1冊の「ロバートブラウン物語」取り合い君と出会った夏の(一知全解)


枡野浩一のかんたん短歌blog」へ久々トラバ。お題は「本」。


■というわけでここを定期・不定期に巡回している人のうち約2.7人しか元ネタが分からないと推定されるわけだが。お題が「本」と言えば、すぐ頭に浮かぶのは清原なつのの短編『花岡ちゃんの夏休み』。ちなみに末尾の「夏の」は「なつの」に引っかけているわけだが、短歌的にはきっと意味はない。(つか、こういうのでトラバするのもどうよ、とかも思うが、まあできちゃったし)

1977年、「りぼん」本誌初掲載のこの作品(デビューは前年の増刊)を初めて読んだときはなかなかの衝撃だった。主に2つの意味で。

ひとつは、大学生の主人公が読書家だったこと。本好きの少女ってのは、少女マンガの定番じゃんという突っ込みが入りそうだが、彼女は単なる本好きでなく、いわば「書痴」に近かった。行き過ぎた本好き。(適切な例かどうか分からないが、「空飛ぶ木馬」から始まる北村薫の一連のシリーズの<わたし>に近いイメージ)。まあ一般的な「りぼん」読者の共感や憧れを呼び起こすタイプではないよね、たぶん。

もうひとつは、彼女がメガネだったことだ。メガネこそ少女マンガの定番じゃんという突っ込みが入りそうだが、「メガネを外したら意外に美少女」という超定番展開でなく、基本的に最初から最後までメガネなのだ。メガネのまま成就する初恋。今に至る「メガネっ娘」の起源がここにある、とか言うつもりはないけど。

もちろん、そうした主人公像が少女マンガ界で初かどうかは知らない(たぶん違うだろう、そもそもリアルタイムの当時の少女マンガ体験は集英系だけだし)けれど、少なくとも当時の「りぼん」上では斬新だったことは確か。現実にはかなりそのまんまなタイプはいたりするわけで、6年後に出会って、あれこれあって、何の間違いか危うく結婚するとこだったりしたわけだが、みたいな誰も聞きたくない自分語りはさておき。


■清原なつのはその後、恋愛モノだけでなく、歴史モノ「飛鳥昔語り」、そして「アンドロイドは電気毛布の夢を見るか」などのSF、とジャンルの幅を広げて秀作の中・短編を生み出していくのだけれど、彼女の、特にそのSF作品の魅力は、誤解を恐れずに言えば、その「スケールの小ささ」にあったと思う。

人類とは宇宙とは存在とは、と根源へ突き進む骨太さとは異なる質と肌触り。日常の、すぐそこに存在するSFワールド、とでも言えばいいか。少女の持つ、潔癖とも言える繊細さ・純粋さと、SF的価値観が違和感なく同居する少し不思議な世界。(SFマニアでないのでよく分からないが、もっと適切で簡潔な表現があるのかもしれない)。

この時期のSFと言うと24年組が浮かぶけれど、その直系とか仲間、というのとは少し違う。直系の傍流、というか。萩尾望都らが、その剛腕で開拓した大地で次々と大輪の花を咲かせている、その片隅で、品種改良した少し奇妙で可憐な花々をはぐくんでいた、みたいなイメージ。


■最近あまり名前を聞かないと思ったら、今は研究職に専念しているらしい、とネット情報をちょっと漁ってて初めて知った。

いったい何の分野の研究者なのか、てとこまではよく分からないが、この人は金沢大学薬学部卒なので、そちらの関係なのだろう。ちょっと意外なこんな仕事をしてたりするのも、その関連と思われる。

なお、「松浦晋也のL/D」の記事によると、今年8月のSF大会に顔を出していたという。SFファンの間では根強い人気があるらしく、大森望のペンネームは清原なつのの作品登場人物から取っていた、というのはこれまたネット情報で初めて知った。(いや、昔知ってたが忘れてただけかもしれないが)

私自身は、その後、彼女の作品を完全にはフォローしきれず、『花図鑑』を未入手で、その後文庫で復刊されたのだが、マンガ文庫は買わない主義なので買えなくて辛いってのは前にも書いたが。つか、唐突に怒ったりするが、CCCDに反対する人はとってもたくさんいるのに、なんでマンガ文庫に反対する人は少ないですか。音楽ファンにマンガ読みが負けててどうするですか(←別に勝ち負けじゃないけど)。ともかく。


■と、ここまで例によって主に記憶に頼って書いてるのだが、年代とかは少女マンガ系サイト「また会う約束」の「1976~1980年りぼん年表」を参照している。しかし懐かしいな。

清原が本誌デビューした77年の「りぼん」の掲載作には、太刀掛秀子「雨のふる日はそばにいて」、一条ゆかり「砂の城」、そして田渕由美子「林檎ものがたり」。うひゃー。他誌では、LaLaに木原敏江「摩利と新吾」、花ゆめに山岸涼子「妖精王」、週フレに大和和紀「KILLA」、別マに河あきら「いらかの波」、週マに弓月光「エリート狂走曲」。くぁー、たまらん。やー、いい時代に少年期を過ごしたデスよ。

そうなんだよね、話がちょっと戻るけど、当時の大学生恋愛劇って、田渕由美子が早稲田の戸山キャンパスを舞台に描いてたアレだったんだよね、「りぼん」読者にとっては。親元を離れ、ちょっと自由な気分の中で、個性的な美青年と、さまざまな美少女が、駆け引きやら戸惑いもありつつ、交際を始める、みたいな。そこへ、いきなりメガネで書痴の「花岡ちゃん」が出てきたんだもんなあ…。


ホントは、清原なつのの本誌デビュー作の話から、その5年後、紡木たくのデビュー作の衝撃(別冊マーガレット、当時17歳!)のお話へとつなぐ予定だったのだが、ここまでで長くなり過ぎちゃったので、またいずれ。

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Comments

花岡ちゃん、感想面白く拝見致しました。わたしは、はげの簑島さんにも衝撃を(笑)。
ご存知かと思いますが、11月25日清原先生の新作、362ページの書き下ろし大作「千利休」が、本の雑誌社から発売されまして、ご同慶の至りですね。

Posted by: 餡贅 | 2004.12.14 at 08:03 PM

コメントどうもです。
そうですね、簑島さん、なかなか衝撃(笑撃ともいう)でした。

「千利休」、あ、すっかり忘れてた…。刊行に伴うインタビューも
(ネットで)読んでたのに。おかげで思い出しました。ありがとう
ございます。買いに行かないと。

Posted by: んばぎ(一知全解) | 2004.12.15 at 02:51 AM

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1977年のことです。それまで、少女マンガなどは馬鹿にしていました。ところが妹が見ていた匁雑誌『りぼん』で「花岡ちゃんの夏休み」を読んだのです。当時の感覚では、... [Read More]

Tracked on 2005.03.07 at 12:30 AM

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